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「婉曲」の意味と使い方・由来・古典での意味・類義語

初回公開日:2018年02月01日

更新日:2020年06月02日

記載されている内容は2018年02月01日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。

また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

「婉曲」の意味は「遠回しに・何かに例えて・配慮しながら」相手に伝える言い方です。人間関係を円滑に保つために、古来から日本人が好んで使ってきた「婉曲」は精神文化にも関わる意味も備えてきました。古典から現代までの「婉曲」について解説します。

「婉曲」の意味と使い方とは?

「婉曲表現」と聞くとなんだか難しそうですが、実は知らず知らずのうちにほとんどの人が使っている表現方法です。

相手にとってメリットがない事柄をストレートに言ってしまうと角が立ちます。その時に遠回しな言い方で、相手の感情を損なわないように配慮することが「婉曲」です。相手の心を傷つけない思いやりが「婉曲な言い方」とも言えるでしょう。

また、自身の激しい恋心を歌に綴った古人も婉曲を好んで用いました。今は「愛してる」と率直に歌う事も当たり前ですが、昔は「はしたない」「品がない」とストレートに表現することは憚られていたので、恋心を何かに例えるなどの婉曲な表現を使いました。

この「婉曲」の詳しい意味と使い方をご紹介します。

「婉曲」の意味と最近の傾向

婉曲とは率直に物事を言うのではなく遠回しに言う事で相手を気遣い、相手に悪い意味の事を言う場合には、自分にもできるだけ敵意を向けさせないようにする言い方です。

相手にとって都合の悪い事を極力そう感じさせずに、何かに置き替えて表現するなど言葉のテクニックが必要ですが、人間関係が円滑に続くように編み出された日本人の知恵と言えます。

現代の「人との関りが希薄な社会」においては相手の懐にズカズカと入るような言い方は避ける傾向にあります。お互いに距離を取りながらの会話が一般的となっているため、敢えて焦点をぼかした言い方が好まれるようになりました。

その結果、婉曲な意味の言葉も次々と新しく生まれるようになりました。最近は「ふんわりとした」という言い方が流行しています。

「婉曲」の意味と由来

日本人は古来から「和」を重んじて来ました。農耕民族で暮らしてきた日本人は皆で協力して農作業を行い、災害には一致団結して取り組みました。そのためには揉め事を起こさずに物事を解決して行くことが重要でした。

その「和」を乱さないように、できるだけ穏便に物事が進んでいくように考え出されたのが「婉曲」という言い回しです。

例えば相手の至らない箇所をきつい言葉で指摘すれば、相手からも手ひどい仕返しが反って来ることも予想されます。それが繰り返されると周囲の人も巻き込んで大騒ぎになります。それでは「和」が保てなくなるので、最初に婉曲な表現で相手の機嫌を極力損ねないような工夫をするようになりました。

お互いに相手の機嫌を損ねないように配慮した言い方が「婉曲表現」です。

婉曲な表現は儀礼的な意味もあった?

古来から日本では「言葉には魂が宿る」と言われ「言霊信仰」というものがあり、めでたい席で不吉な言葉は忌み嫌われ使うことはタブーとされてきました。

例えば、現代でも結婚式において「切れる、別れる、終わる」などの言い方は使われません。結婚式のケーキカットは「切る」と言わず「ケーキ入刀」と言い、結婚式が終了する時は「お開き」と言います。

「婉曲」の古典での意味は?

古典の中にも婉曲の意味で使われている言葉があります。婉曲は古くから使われてきた表現方法です。

古文の中にある婉曲の意味は、自分の熱い思いを率直に表現せずに、密やかに隠して伝えたい時の手段として用いられることです。

また、あまりに露骨な表現は「無粋」「野暮」と言われました。「粋」という言葉の意味は今の言葉で「おしゃれ」「格好いい」という意味とほぼ同じです。つまり露骨な表現は「格好悪い」となるので婉曲な言い方が好まれました。

「婉曲」は助動詞「む」の使い方のひとつ

古典の文法を覚える時に助動詞の「む」の使い方で「スイカカエテ」と覚えた人も多いでしょう。

ス=推量 イ=意思 カ=仮定 カ=勧誘 エ=婉曲 テ=適当 となっています。「む」の次に名詞や代名詞がくる「連体形」は「推量」と「婉曲」が多いのですが、推量が使われている時の主語は第三者となります。一人称、二人称の主語で連体形の「む」であり「~のようだ」と訳す事ができたら婉曲の意味となります。

他の「意思」の意味でも連体形の場合があるので、一概に連体形の助動詞「む」が「婉曲」「推量」であるとは言い切れません。

「意志」の助動詞「む」の連体形の例
心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花 (小倉百人一首 汎河内躬恒〔おおしこうちのみつね〕)
意味は「当てずっぽうに、もし折るならば折ってみようか、真っ白な初霜が降りて見分けがつかなくなっている白菊の花を」となります。

「婉曲」の「む」を使った例文

「婉曲」の意味で助動詞「む」を使った例文です。

長からむ 心もしらず 黒髪の 乱れて今朝は 物をこそ思へ
(小倉百人一首 待賢門院堀河)
意味は「あなたが末長く心変わりしないということは信じがたいのです。お別れした今朝は黒髪が乱れるように心も乱れてあれこれともの思いにふけるばかりです」となります。

実は激しい恋の歌ですが、婉曲の「長からむ心」が永久不変の愛情を表現しており、表面的には強い印象を与えていません。

推量との違い

推量の意味で「む」が使われている時は主語が第三者である場合です。第三者とは「彼、または彼女、その他」です。人物ではない場合も含まれます。

「推量」の意味での「む」の例文

八百よろず神もあはれと思ふらむ 犯せる罪のそれとなければ(源氏物語・須磨の段 円地文子訳)より
意味は「八百よろずの神々も私の無実の罪をあわれと思って下さるでしょう」となります。

夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ(小倉百人一首 清原深養父)
意味は「夏の夜はまだ宵だと思っているうちに明けてしまったが、雲のどのあたりに月はとどまっているのだろう」となります。

「婉曲」の意味の類語

「婉曲」の意味と使い方・由来・古典での意味・類義語
※画像はイメージです

現代の婉曲の意味の類語を紹介します。

遠回しに・にじませる・ぼんやりと・思いやりのある・ふんわりとした・回りくどい言い方・
さりげなく・それとなく・穏やかに・目立たないように・遠慮がちに・注意を払って・はっきりしない・正面切らない・オブラートに包んだ・配慮しながら・言外に・暗示する・ほのめかす・示唆する・漠然とした言い方・微妙な言い回し・意味ありげに・間接的・持って回った言い方・やわらかい、などがあります。

物事をはっきり伝えることをためらう場合に使います。

「婉曲表現」を使った例文

・「今度の勤務地は健康に良いところだから、キミのお子さんの療養には丁度良いだろう」と上司から穏やかに移動を命じられたが、離島というのはやはりショックだった。

・「児童の安全には十分に配慮してますし、今度の事件のことを教訓にして教師一丸となって取り組みます」と、校長はオブラートに包んだような言い方で保護者を胡麻化そうとしているようにみえる。

・私の趣味には合わない男性に告白されて「もう少し私が大人になった時なら」とにじませた言い方をして後悔している。

「婉曲」の意味の対義語

婉曲の意味の対義語は「露骨」となります。はっきりと伝えたい意思を表現する意味で使う言葉です。本当に断りたい時はあからさまに意思を表現する事が大切です。

同じ意味の類語は以下のようになります。

開けっぴろげ・剥きだし・ありのまま・あからさま・赤裸々・露わなどがあります。

「婉曲」を使い過ぎないで

婉曲な言い方は相手を尊重して思いやりのある言い方とも言えますが、あまり使い過ぎると何を言っているのかわからなくなり、真意が相手に伝わらない場合もあります。

京言葉が難しいのは有名ですが、それは京言葉に精通した人でないと伝わりません。「上手なピアノですなあ」と言われて「ありがとうございます」と礼を言う人は京言葉を理解していません。本当の意味は「ピアノの音がうるさい」と苦情を言われているのですから「申し訳ありません」と謝るのが正解です。相手が理解できる範囲の婉曲が無難でしょう。

よく勧誘の電話がかかってきますが「そういうのはいいです」と言ってしまうと断ったつもりの「いいです」が「了解です」の意味にとられてしまうこともあります。相手によってはハッキリと伝えるほうが大事な場面もあるので注意しましょう。

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